インド音楽

インド音楽から連想されるのは、60、70年代であればビートルズとラビ・シャンカール、80年代でシャクティとザキール・フセイン、そして90年代ではバングラブーム。 いつの時代でも、加工こそされてはいますが、インド音楽は世界に輸出され、またインドのミュージシャンは各国で活躍してきました。今日でも、音楽を学びにインドを訪れる外国人は絶えません。

単なる摩訶不思議な音楽ではなさそうです。

インド音楽の何が、国籍を問わず多くの人を魅了するのでしょう? インド音楽と一口に言っても、古典音楽もあるし、インド版演歌といえる情感たっぷりのライトミュージック、そして最近では映画音楽と、様々です。

ここでは北インド古典音楽について簡単に紹介しようと思います。

北インドのヒンドゥスタニ音楽の歴史は、溯ること4000年前、四大聖典の一つであるサーマ・ヴェーダの詠唱が起源と言われています。 つまり、歌(すなわち声楽)は全ての芸術の根源であり、声楽から、器楽、舞踊、演劇に発展したとされています。

ここで私の持論を展開しますが、私は、北インド音楽は哲学と密接な関係にあると考えています。 ムスリム王朝、ヒンドゥー王朝と揺れ動く歴史の中で、音楽は発展を遂げてきました。宗教ではなく哲学があるからこそ、音楽は生き続けてきたのです。 演奏家が目指す神の音(ナード・ブラフマー)とは、音楽を通して神と一体化しようとする、ウパニシャッド哲学の実践と言っても過言ではありません。

インド音楽の奥深さはここにあります。

これこそ、インド音楽が国籍問わず愛される理由なのかもしれません。

「古典音楽って退屈なんだよなぁ。ついウトウトと居眠りが始まっちゃって…」


古典音楽は、旋律を奏でる楽器(または歌)とリズムを打つ打楽器で構成されています。

始まりは旋律楽器だけで非常~にゆっくり…。このアラ―プと呼ばれるパートで、多くの人が睡魔と闘うことになるのです。

実は、古典音楽を聴くには、ちょっとしたコツがあります。それさえ覚えておけば、あなたも古典音楽のとりこになること間違いなし! まず前提として、何よりもまず、私も音楽に参加する!くらいの意気込みが必要です。(参加するとは別に楽器を抱えてセッションしろという意味ではありません、念のため) 即興要素の高い音楽であるからこそ、聴衆に左右される部分も大きいのです。ここでは「唸る」ことをポイントとしてみます。 唸るためのキーワードは3つ。 ラサ、ミ―ンド、そしてサム!

ゆっくりしたアラ―プの部分では、ラサとミ―ンドを楽しもう!


ラサとは、音楽が創造する「雰囲気」を表す言葉で、9つのイメージ(怒り、悲しみ、喜び、等など)に分類されます。 古典音楽には、ラーガと呼ばれる異なった音階(日本の例でいえば、沖縄の音階など。音階内で使用する音、音数が違う)が何百とあり、各ラーガは特有のラサや演奏されるべき時間など、多くの特徴があります。例えば、「今日のラーガは、カマージです」と言われれば、自ずと音階やラサがわかります。古典音楽は、知識があればあるほど魅力が倍増するのです。(これは、西洋のクラシック音楽も同じですね)

とはいえ、勉強はちょっと…という方も、そんなに難しく考えることはありません。 音楽は、音を楽しむもの。結局のところ、この演奏者はどういう雰囲気を出したいのか、また音楽を聴いて、あなた自身のイマジネーションを頭の中で広げて楽しめばいいだけなのですから。


ミーンドって何?


ミ―ンドは、このアラ―プの部分で頻繁に使用される演奏テクニックの一つ。古典音楽はこのミ―ンドなしには成立しません。 例えば、ドからファに行きたいとき、ド→ファとストレートに行かず、ド レドシド ファと微分音で装飾を付けるのです。 シタールなら、弦を引っ張る事で音を揺らします。弦楽器でこそ出来る技であって、当然、ピアノなどの鍵盤楽器では演奏できません。

インド人はこのミ―ンドが大好きで、複雑になればなるほど、「はぁー」とため息を漏らしたり、頭を左右に振って感動を表します。中には西洋音楽のブラボーに当たる「キャーバートヘェ!」(素晴らしい!)を連発する人もいます。 先ずは、周りを観察して、インド版感動の仕方を身につけちゃいましょう!


1拍目、それがサム


サムはリズムに関係しており、打楽器が加わってからの部分で楽しめます。 インドのリズムはタールと呼ばれ、16拍子、12拍子、中には11拍子なんてものもあるくらい複雑に分類されています。 それだけたくさんあるタールに共通するのは、最初の1拍目がサムと呼ばれ、もっとも強調されることです。 旋律楽器は16拍子を刻んでいるのに、打楽器は複雑かつ難解なリズムで、これは何だ?と思わせておいて、きちんとサムを合わせる。ここでまた「キャーバートヘェ!」、曲の合間にもかかわらず拍手喝采です。

また、ティーハイと呼ばれ、同じフレーズを3回繰り返し、サムであわせた時なども、首を振って唸りたいポイント。例えば以前流行った「だんご3兄弟」。この曲の最後は、まさにティーハイだったりします。

インド音楽は、楽しんだもの勝ち。ぜひ一度は、この面白さを経験して唸ってください!